リスクベースメンテナンスにおいて,リスクマトリックスの縦軸に用いられるのは通常は年間発生頻度(Frequency)が多く,確率値(PoF)が用いられることは少ないものと思われる.その意味では,縦軸はFrequency と表記すべきであるが,明確な区別をすることなくPoFが用いられることもある.この区別を明確にしておかないと混乱を生じかねない.そこで,統計的な整理を行っておくこととする.
年間発生頻度を\(\lambda \)と表記することとする.\(\lambda \)は1に比較して非常に小さな数値であので,年間に\(n\)回発生する確率は次式のPoisson分布で表現できる.
$$ P(n)=\frac{\lambda^n}{n!}exp(-\lambda) $$一年間に一度も事象が発生しない確率は\(n=0\)を代入することにより,以下で与えられる.
$$ P(0)=\frac{\lambda^0}{0!}exp(-\lambda) \approx 1-\lambda $$上式の関係から,年間に一回以上事象が発生する確率は
$$ 1-P(0) \approx \lambda $$つまり,年間発生頻度\(\lambda\)とは,一年間に一回以上発生する確率に他ならない.その意味で,確率と表現することは間違いとは言えない.